酸素欠乏による呼吸不全


この病気は・・・

 当然のことながら病気ではありませんが、ザリガニの呼吸に関しては、誤った認識が定着していることもあり、それに基づいた飼育方法によって、かなり多く見られるパターンです。比較的経験の浅いキーパーに多い失敗ではありますが、言い訳のできない完全な「人災」であり、ザリガニにとってみれば「最も苦しい殺され方」になりますから、私たちキーパーは、くれぐれもこうした形で個体を殺すことのないよう、充分配慮しておくことが必要です。

原因と症状

 原因は極めて単純なことで、飼育水中の酸素量が極端に少なくなるためです。種類によっても若干の違いはありますが、最も強健なアメザリ・ヤビーでも、3ppm以下になると危険で、1ppm以下になると死に始めます。
 症状ですが、水中の酸素量が少なくなると、個体は共通して「水面に出」ようとする行動をとります。これは、多くの種が「エラに湿り気があれば、直接大気中の酸素を摂取できる」という緊急危機回避能力を持っているからで、水面に出て体を横たえ、エラを大気に触れさせようとするためです。当ホームページでも再三取り上げておりますが、これはあくまでも「緊急時」の危機回避策であり、ザリガニにとって水中に充分な酸素が溶けていれば、こういった行動をとることはありません。
 それができない場合、個体は水槽の隅で無意味に立ち上がったり(上に登ろうとする動作)、第2〜第5胸脚を激しく揺らしたりする動作を始めます。これは、種によって通常時でも見ることができますが、かなり苦しいわけですから、必然的に動きは激しくなります。ここで気づかないと、後はありません。

伝染する?

 伝染はしませんが、同じ環境で飼育する限り、どの個体にも確実に発生します。しかも、発生する時は一気に出てきますので、水槽一つが全滅することになりましょう。

予防・対処方法

 もし、それらしい兆候が見えた場合、エアーの供給量を上げます。また、水槽の収容個体数が多い場合にも発生しますので、こういう時には個体を別の水槽に分けてやりましょう。
 予防については、とにかく確実かつ充分なエアレーションをかけることに尽きます。酸欠に弱いマロンなどはもちろんのこと、アメザリやヤビーなどについても、エアレーションは必須です。要は「ザリガニは、エラで呼吸する水生生物である」という基本的知識を持ち、その上で「ザリガニを飼育するためには、必ずエアー設備を準備する」という基本姿勢を堅持すればよいのです。
 なお、これについては、エアーホースの着脱トラブルでも発生することがあります。日ごろからホースの状況を確認するとともに、エアポンプの清掃や整備・送気能力の確認などをしっかりとやっておくようにしましょう。