ザリガニミミズの寄生
この病気は・・・
病気ではありませんが、個体に薄い黄土色から白っぽい色の糸ミミズのような生物が付着してしまうものです。自然下はもちろん、ショップなどで売られている個体にも、時たま見受けられます。特に害はないようですが、やはり見栄えが悪いため、キーパーからは嫌われています。
原因と症状
付着している生物の正体は、ヒルミミズ科の寄生虫で、広く「ザリガニミミズ」と呼ばれ、かなりの種類が知られています。体長は8ミリ〜13ミリ程度で、体の先端に円状の吸盤を持っているため、それを個体に貼り付ける・・・という形で付着しています。付着箇所は、頭胸甲・胸脚から尾扇までの全体に渡り、特に額角付近や頭胸甲下部のエラ口近辺には、よく見られます。このミミズは、主としてザリガニの腹脚を産卵場所にしています。
ザリガニミミズが付着している個体は、中には胸脚などで一生懸命掃除するなど、若干嫌がる個体も見られますが、一般的には特に気にすることもなく「共存」しているケースが多いようです。ザリガニミミズの栄養源は、底砂中ないしは水中に漂う有機物などであり、ザリガニの体表を傷つけたり、栄養分を吸ったりすることはありません。ということもあってか、付着によってコンディションを崩したり、深刻な問題を発生させたりする個体もないようです。
伝染する?
伝染はしませんが、よく出てしまうという環境で飼育した場合は、同じ水槽に収容している個体には発生しやすくなる・・・と考えてよいでしょう。
予防・対処方法
キーパー同士の話を聞いても、「時たま発生する」という人と、「全く発生しない」というように分かれ、また、ショップでも同じことが言えます。このミミズの中には、清澄な水にしか棲息できないニホンザリガニに付着する種類も確認されているくらいですから、単に「水の清潔さ」という問題だけでなく、ミミズが付着しやすい、あるいはしにくい何らかの水質・・・というものがあるのかも知れません。
もし、発生してしまった場合、ピンセットで除去するというやり方が多く用いられますが、前述の通り、卵は腹脚に生みつけられ、しかも極めて小さいものですから、根元的な解決にはなりません。また、「脱皮させれば除去できる」という説もあり、理論上はその通りなのですが、これまた上手く行かないことが多いようです。脱皮の場合は、直ちに脱皮殻を取り除くようにしましょう。
「害」という点では問題ないのですが、やはり「見栄え」の問題は致命傷ですので、食用生産の場合は、酸化カルシウム(生石灰)液に浸して除去するという方法が一般的です。その他、ザリガニミミズ自体の学術研究においては、10%ホルマリン液に浸すことで、個体からザリガニミミズを取り出す・・・という方法も知られていますが「個体に対する安全性」という点では、必ずしもお薦めできる方法ではありません。
なお、これは極めて不充分な説ですが、「弱アルカリまたは硬度の高い水では、ザリガニミミズが付着しないのでは?」という考え方があります。確かに、キンキンの硬水である佐倉では、どの個体にも付着が見られないこと、軟水系のショップの個体には、付着している個体が多い・・・という傾向が見られること、そして、実際の除去方法に「石灰」が用いられること・・・などから、ある意味で説得力はあるのですが、こうした説を裏付ける学術論文がございませんので、「説」として主張するには、まだまだ問題がありましょう。今後の研究成果に期待したいところです。