水温ショック・pHショック


この病気は・・・

 本来、病気ではありませんが、なってしまった時の行動が極めて異常であることから、キーパーも大変驚くことが多いようです。ただ、この症状、基本的には、ほとんどが「キーパーの不注意」に端を発する「人災」であるといえましょう。こうしたことは、一般的な観賞魚飼育でもよく知られていることですし、ちょっとした注意を払うことで、簡単に回避できるものですから、キーパー側からすると、「恥ずかしくて公表できない」症状の一つです。
 なお、この現象を逆手にとって活用するものに「強制脱皮」というものがあります(これについては、別の項目で触れます)。

原因と症状

 すでに申し上げるまでもなく、この症状は、飼育水の急激な温度変化・水質変化によってショック状態を起こす・・・というものであり、個体の導入時や全量換水時などといった「水の入れ替わり目」に発生し安くなります。もちろん、通常下や少量換水時には発生しないか・・・といえば、それを完全には否定できませんが、そのような環境では、通常、ショックを起こすほどの変化は発生しませんので、よほど敏感な種でもない限り、まず大丈夫です。仮に水槽内でこうした変化が起こったとしても、ザリガニは一般的な観賞魚よりも高い耐性を持っているようなので、「死ぬのは、同居の魚がすべて死んでから・・・」ということになりそうです。
 症状としては、キーパー内で「踊る」と呼ばれる不規則な動作を見せるのが普通です。これは「姿勢を保持できない」「横たわったり、立ち上がったりを繰り返す」「意味不明な方角に向かい、不規則な歩行を繰り返す」などを示し、いずれも、非常に苦しがっていることを意味します。徐々に慣れてくることで収まるケースもありますが、変化度合いがあまりにも大きいと、耐えきれずに死んでしまいます。特に急激な水温上昇には厳しいようです。変温動物であることを考えれば、当たり前のことですが・・・。

伝染する?

 もちろん、しません。ただし、これになる場合は、ほとんどすべての個体が、ほぼ一斉に発生します。

予防・対処方法

 こうした現象を回避するためには、ひとえに「基本事項の遵守」に尽きます。ザリガニ(特にアメザリ)の場合、一見「不必要」であるとさえ思える「水合わせ」ですが、これをしておくだけでも全然違います。淡水エイなどのような慎重さまでは要求されませんが、どんな種であっても、水合わせだけは欠かさないようにしましょう。また、換水についても、種類ごとに「どこまでの量なら大きな負担が掛からないか?」という部分を把握し、それを越えない量で換水をします。さらに、夏期・冬期などは、換水用水と飼育水との温度差が予想以上に大きくなる場合があるので、注意が必要でしょう。
 もし、こうした症状を見せ始めた場合は、個体をただちに元の水(新しい水に入る前の水)へ戻し、一旦落ち着かせます。この時点で、個体には相当の負担が掛かってしまっていますから、できれば数日、早くても一昼夜はその環境で維持し、個体の回復を待ちましょう。その上で、再度水合わせからやり直しますが、その際は、古い水にできるだけ近い水温・水質の飼育水を準備しておく方が無難です。
 なお、この症状を発見してから個体を元に戻すための判断・行動は、早ければ早いほど効果があります。少なくとも個体は「何とかその水に順応しよう」と頑張っているわけですから、やっと上手く行きそうな時に戻す・・・ということになりますと、個体への負担は倍増すると考えてよいことになります。