バーンスポット(焦点)病


この病気は・・・

 この病気は、一般的な熱帯魚でいう「白点病」のような位置にある病気で、飼育下においては最も発生しやすい病気だとされています。元来はヨーロッパのザリガニによく見られる病気だ・・・とされていますが、日本では、ほとんどすべての飼育種で、この病気の発生が報告されています。病変部の色合いから「黒点病」と呼ばれることもあります。発見が早ければ、さほど恐ろしいものではありませんが、病状が進行してしまうと手がつけられなくなりますので、導入時の充分なチェックが必要です。購入の段階で、すでにこの病気にかかっていると思われる個体については、手を出すべきではありません。

原因と症状

 水中には、様々な菌があって、それらの中には、ザリガニにとって好ましくないものも数多く存在しています。ただ、当然ながらザリガニにも、これらの菌に対する免疫や抵抗力がありますので、すべての菌が死滅しなければ生きて行けないか・・・となると、そうでもありません。よって、これらの菌が困った働きをしてくれるのは、主として個体が弱った時であると考えてよいでしょう。
 こうしたケースで、最もかかりやすく、事例も多いのが、このバーンスポット病です。キチン質分解細菌が、主として擦れ傷や欠損箇所などに入り込み、焦茶っぽい色素沈着を起こします。ただ単に色素沈着を起こすだけならば問題もないのですが、この沈着部は、やがて内部組織と癒着し始めてしまい、脱皮ができなくなってしまうわけです。そういった細菌としては、Ramularia astaci、Didymaria cambari、Fusarium spp.などが知られていますが、それ以外にも、まだ数種類はいるようです。
 症状は、最も初期的なものですと、尾扇や胸脚などに、焦茶色のスポットが見え始める程度で、行動や食欲など、活動一般には何の変化もないのが普通です。病状が進行して行くと、尾扇などの場合は、その部分に穴が開いたり、欠損したりしますが、この段階でも、食欲などの変化は見られません。
 ところが、この状況を放置しますと、焦点はどんどん広がり、頭胸甲などにも大きなスポットが見られるようになります。胸脚部には、これによる欠損も出始めます。焦点は、この段階ですでに外殻を溶かしきった状態で、内側と癒着してしまっていますから、脱皮が非常に困難な状態となっており、食欲も落ちて、水槽の隅にうずくまるようになります。この後、脱皮不全で死ぬケースがほとんどですが、重篤な場合は、脱皮すらできません。

伝染する?

 ヨーロッパでは、非常に伝染性の高い病気であるという位置付けがなされているようですが、国内の飼育事例を見る限り、そのような深刻な伝染は見られないようです。ただ、劣悪な環境が原因なので、かかる場合は同居個体すべてがかかりやすくなっていると考えてよいでしょう。

予防・対処方法

 早期であれば、脱皮をさせることで簡単に治せます。また、海水を混和(1〜3%)させた多少硬めの水で脱皮後のケアをするキーパーもいますが、これについては学術上の裏付けがなく、すべての種に対して有効であるかどうかはハッキリしません。胸脚の場合、個体が自切してクリアするケースもごくまれにありますが、末期の場合は、残念ながら治癒させられない・・・とされています。
 予防については、とにかく清潔な飼育環境を維持するということで、極端に汚れた水での継続飼育は避けるようにします。特に、底砂が汚れている状態ですと、発生しやすいといわれますので、定期的な底砂洗浄は忘れないようにしましょう。また、飼育水の水位が低すぎる(いわゆる「背中が隠れる程度」)環境でも発生しやすいので、注意が必要です。